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決算書の読み方[2](経過勘定について) 2017/05/26

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決算書の読み方[2](経過勘定について)


経過勘定は、貸借対照表(BS)に表示されます

前回のコラム(→決算書(BSとPL)の読み方[1])で、決算書のBS,PLの関係について、お話しましたが、今回は「経過勘定」について、ご説明いたします。
経過勘定には、未収入金、前払費用、未払費用、前受収益などがあり、BS(貸借対照表)に表示されます。
経理では通常、決算の時に、まとめて経過勘定を整理してから決算書を作成します。この整理をしないと、誤った利益になってしまうので、うっかり処理を忘れる、というわけにはいきません。

なぜ、経過勘定を計上するのでしょうか?

それは、利益-損益計算書(PL)と関係があります。
前回のコラムで、損益計算書は、ある一定の期間(事業年度)の収益と費用の金額を表示するので、利益が計算しやすいとお話しました。また、BS科目の発生だけでは、利益は変わらないことも触れました。
仮に3月末が事業年度末の会社が、3/31に、3月分及び4月分の家賃2ケ月分を支払った場合の、BS,PLを考えます。
お金は支払っているので、3末のBS(預金残高)は、支払後の残高になります。
一方、PLは、3月までの費用しか計上できません。4月分の家賃を費用(PL)に計上すると、正しい利益よりも少なくなってしまいます。
このため、4月分家賃は一時的に、「前払費用」としてBSの資産の部に表示します。これが経過勘定です。前払費用はBS科目なので、4月分の家賃支払い分は、利益に反映されません。

経過勘定の主な科目

経過勘定の各科目の内容は(3月末決算と仮定)

・前払費用・・・3月までに支払った、4月分以降の費用
→4月分以降の費用は費用になりません。(BS資産の部に表示)

・未払費用・・・3月末までに支払いが確定している費用で、4月以降に支払う分(3/20締の給料で、3/21-31分の給料など(4月支払))
→BS負債の部に表示。また、費用としてPLに計上します。

・未収収益(未収入金)・・・3月末までに売上げや収入の見込みが確定しているが、4月以降の入金になる分(カード売上の収入、未回収の売上など)
→入金がまだでも、BS資産の部に表示。その分の収入はPLに計上します。

・前受収益・・・4月以降の収入だが、3月中に入金になった分(家賃収入など、このケースが多いです)
→入金になっていても、BS負債の部に表示。PLには収入を計上しません。

経過勘定の科目はすべてBSに表示されます。

経過勘定の処理をしなくてよい場合もあります

正確な利益を把握するためには、上記のように、経過勘定を整理する必要があります。
ですが、例えば、火災保険料など、毎年支払っている費用で、支払対象期間が1年以内の分についてまで、全て経過勘定を整理すると、大変煩雑になってしまいます。
そのような費用については、毎年継続して支払った時に費用計上をしてもかまいません(ワン・イヤー・ルールといいます)。
ただし、売上と対応する費用(売上原価など)については、ワン・イヤー・ルールの取扱は認められていないので、経過勘定の計上が必要です。

利益は、納税額に影響します

決算上の利益は、法人税などの税額計算の基になります。ですので、利益の算定は重要です(決算末より2ケ月以内に、法人税などの納税があります)。
経過勘定のうち、未払費用は、利益を減らしたいときに、役に立つことがあります。例えば、決算末までに、修繕工事が完了→費用をPLに計上すれば、利益が減るので納税が減ります。3月末決算の会社で、工事が4/1に完了→費用の計上は来年の決算になってしまいます。資金繰りにも影響してくるのです。

次回、「利益とキャッシュフローについて」で、「決算書」の見方を終了する予定です。






寺崎 直子
執筆者:寺崎 直子寺崎法律会計事務所 代表 , 東京都 千代田区麹町
昭和63年3月に損害保険会社を退職後、結婚。
平成元年に税理士事務所へパートとして勤務のかたわら、税理士試験の勉強を始める。
平成4年に、最終合格し、平成11年、先代の引退に伴い、お客様を一部引継いで独立開業して、現在に至る。
平成30年2月に認定経営革新等支援機関登録(認定支援機関は、経営をサポートする経済産業省認定の専門的な機関です。助成金や税制上の恩典を企業が受けられるようにアドバイスをすることができます)。

業務内容は、税金の計算ですが、その前には、地道な経理作業がかかせません。経理作業の中で、お客様の相談を受け、税金面でのアドバイスをすることも多くあります。
税務を通じて、長いお付き合いになることも多く、(人生でも!)勉強になっています。
お客様の考え方、人となりを知ることが、税金の計算において、とても大事だということは、この仕事をしていく中で、初めて知りました。
試験勉強をしたときは、計算だけが重要だと思っていましたが・・・・
それが面白さでもあり、また、大変なところでもあります。

主人との2人暮らし。趣味だった、バードウォッチングの影響もあり、おしゃべりインコ(ヨウム)を飼っています。 出勤するときは、「いってらっしゃい」というので、とても可愛いです。
(かまってあげないと言いませんが・・)
運動不足の解消にと、フラダンスを始めて、その面白さ、難しさにハマりつつあります。何でもコツコツ練習するのが大事ですね。

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