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コロナ禍で正確な情報をつかむには?  アートを活用し観察力や言語力を培う講義をしている医師の森永康平さんに伺いました 2021/07/30

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コロナ禍で正確な情報をつかむには?  アートを活用し観察力や言語力を培う講義をしている医師の森永康平さんに伺いました


 コロナ禍で正確な情報をつかむことの大切さや難しさを痛感した方もいらっしゃると思いますが、診療に必要な洞察力、自分が集めた情報の吟味も含めた言語力を培う講義を、医学部で開講している医師の森永 康平さんに、お話を伺いました!


診療に必要な能力

 森永さんは2011年筑波大学医学部を卒業、2019年から獨協医科大学で『みる』力など診療に必要な能力のための授業を始め、2020年「医学教育を観察と対話から」を掲げ講義などを行う「ミルキク」を起業、2021年から「とちの葉クリニック」の院長もされています。

 医学部では試験問題を中心に徹底して大量の専門知識を教え込まれるということですが、実は試験問題で提示されている情報は正しい(信憑性などを考える必要がない)、提示されている情報のみで回答が導き出せる、という前提が隠れています。

 しかし患者さんを実際に診療していく現場では、自分が入手したい情報を患者さんに話を伺い、また入手した情報を吟味し取捨選択し、自分で決断していく力を身につけることが大切だと感じていたということでした。


正しい診断に結びつけるために

 森永さんは診察を行うにあたって、目の前の患者さんが発している情報をなるべく逃さないようにしているとのことです。

 そのためには観察力を研ぎ澄ませ、言葉尻だけじゃなく対話の際の微妙な視線や表情の変化にも注視しています。

 説明の理解度や特定のトピックに対する感情など非常に重要な(しかもその空間でしか得ることの出来ない)情報が隠れているからです。

 また患者さんの背景と受診に至るまでの”物語”を構造として意識することで、正しい診断や的確な判断に結びついたり、また経験を自分の中だけに留めず、周囲へと共有することが可能になります。


どこからそう思う?

 森永さんの外来には複数の医療機関を受診しても原因が特定できない患者さんの受診も少なくないとのことですが、その中でも患者さんの話や前医の紹介状など既にある情報を「事実」と「解釈」にふるい分けすること、そして「事実」に基づいて原因を考えていくことが基本であり、かつとても重要だと述べられています。

 例えば「体重が減ったので心配」という患者さんが受診されたことがありました。

 その患者さんはとても元気だったのですが、1ヶ月ぶりに自宅で体重を測ると5kg減っていたとのことなのです。

 ですが違和感をもって病院の体重計にのって測ってもらうと全く減っておらず、家の体重計が壊れていたという事実が判明し…という話もありました。

 笑い話のようですが、体重減少がないことを証明する血液検査などは存在しません。

 もし「体重が減った」という言葉は事実か?という視点がなければ、不必要で侵襲のある検査が連発されていたかもしれません。

 このように現場で事実と解釈を区別しながら診療を行っていくのは非常に重要なのですが、主体的に情報の取捨選択や吟味を行うトレーニングというのは教育現場ではあまりありませんでした。

 そんな背景からアート作品を題材にしながら観察力や言語力の向上が目指せる「対話型鑑賞」という手法をベースにした授業を行っています。


対話型鑑賞

 対話型鑑賞とは、1980年代にニューヨーク近代美術館(MoMA)で生まれた美術の鑑賞法で、アート作品をみんなで「みる・考える・話す・聴く」を繰り返すことで、観察力・思考力・言語能力・コミュニケーション能力を楽しく身につける方法です。
 
 そして実際にこのコラムの筆者は対話型鑑賞をやってみたのですが、絵画を見ながら描かれている状況を私が発言すると、また「どこからそう思いましたか?」ということを丁寧にファシリテーターが質問してくださいます。

 質問されることでなんとなく”悲しそう”と感じていたことが表情(目や口角など)が根拠になっていたことなど気づきがありました。

 またこのように絵をじっくり見る機会は最近では殆どなかったのですが、決して私の答えを否定することはないので、ほっとするような気がしました。


コロナに関する正確な情報をつかむ

 最後にコロナに関する正しい情報を得るポイントを伺ったところ、

 『TVに出演している有名人だから信じるのではなく、発言者(元)が誰で、前述のように「事実」なのか「解釈」なのかという視点で情報を吟味すること、複数の情報源を参照すること等が重要です。

 特に強い断定の論調で書かれている文章”ワクチンは○○だ!”とか知人の知人(=他人)の噂話などは注意して受け取ってください。

 また最新の方針を知るには、まずは国からの発信(厚労省のサイト等)から注視してください。

 英語にはなりますが米国疾病管理予防センター(CDC)のサイト等は、現時点で(科学的な視点で)ほぼ「確実である」と分かっている情報を載せている場合が多いです。』とのことでした!

今回教えて頂いたのは 森永 康平さん


森永さん画像

2011年筑波大医学部卒。19年から獨協医大で臨床実習前の学生に対し,対話型鑑賞の手法を中心として診療に必要な能力を高める授業を開講。昨年度より京都芸術大の学際デザイン領域に進学し,芸術修士(MFA)取得をめざしている。医療分野でのアートを用いた教育で言語化能力やコミュニケーション能力の向上をめざし,20年にミルキクを創業した。






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