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「経歴詐称」と「自己演出」のボーダーライン 2016/03/29

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「経歴詐称」と「自己演出」のボーダーライン


「経営コンサルタント」という肩書き

このコラム、またまたずいぶんご無沙汰してしまった。
事業の見直しや事務所の移転をはじめ、どっぷり時間をかけたい案件が続き、またまた何か月もご無沙汰してしまう結果に。

さて、最近話題になっている某経営コンサルタントの経歴詐称問題。
小生はこの騒動に対し、違和感を禁じ得ない。かと言って、経歴詐称を容認するわけでも、事前に調べず登用した番組制作者を責めるわけでもない。世間、特にメディアが「経営コンサルタント」を必要以上に持ち上げすぎてはいないかという思いが今回の件を機に強く感じるのである。

そもそも経営コンサルタントなんて国家資格ではないし、民間資格でもない。ただの「呼称」に過ぎない。MBAを持っていない経営コンサルタントなんてごまんといる。どんな仕事をするかと言えば千差万別で、起業支援、節税、資金調達、営業、新規事業支援などある特定の分野を取り扱うコンサルタントがいれば、満遍なく取り扱うことを標榜する者もいる。ちなみに小生は、これまでの自分自身の成功と失敗の経験を活かし、一人または少人数で営む企業の経営者のための「相談役・知恵袋」を業務とする経営コンサルタントである。つまり自ら名乗れば誰でもなれる仕事であり、玉石混交であることは間違いない。似たような士業に中小企業診断士がいるが、経営コンサルタントと同一のものではない。税理士だって「税務(財務)専門の経営コンサルタント」と名乗ることもできるのだ。

今回の騒動については、保有していない資格を保有していると公表する「経歴詐称」を行うことで、公共の電波を使い、収入(ギャラ・出演料)を得ることは問題のある行動だったと考える。しかし、自分の経験や知識を活かして事業を行う者にとって商品は自分自身であり、そのためのプロモーション、ブランディングつまり「自己演出」は、特に雨後の筍の如く出てくる経営コンサルタントにとって絶対に不可避な要素である。事前に当事者の身辺調査をせず、「自己演出」ではなく「経歴詐称」であったことを見極めることができなかった番組制作者の手抜きの結果でもある。


何が「経歴詐称」で何が「自己演出」なのか

では、当の本人はどうすれば良かったのか。何が「経歴詐称」で何が「自己演出」なのか。
広義には「自己演出」のうちの一つが「経歴詐称」であると言うことはできるが、ここで挙げる前者は「事実ではないものを、事実であると公表すること」であり、後者は「事実の範囲内で必要なもののみを公表すること」である。つまり、嘘はいけないが、事業運営上不必要な情報は公開しない、ということができる。ここが「経歴詐称」と「自己演出」のボーダーラインである。

経営者もビジネスマンも業務上、自分の経歴の「脚色・演出」が必要になることは十分ある。しかしそれも度を超すと「詐称」になってしまう。
どうせ「脚色・演出」するなら、事実以上のものを「盛る」のではなく、不必要な事実を「削る」ようにしないと、手痛いしっぺ返しを受けることになるのは今回の一件で明白であるし、再認識しなければならないと自らにも言い聞かせたい。





坂井 陽介
執筆者:坂井 陽介グッドフェローズグループCEO
一人社長アドバイザー/経営コンサルタント/ファイナンシャルプランナー

1974年生まれ。大学卒業後、予備校講師を経て25歳でアリコジャパン(現メットライフ生命)の保険代理店を開業。1年目より優績代理店として評価を得る。27歳で事業拡大を目指し学習塾を買収。杜撰な事業計画のため半年で学習塾を閉鎖。この時の負債総額は約3000万円にのぼり、保険代理店事業を二束三文で売却。その後、売却先の保険代理店や不動産仲介会社に勤務し5年で債務を返済。
現在は「一人社長アドバイザー」としてこれまでの成功と失敗に基づき、独立間もない一人ないし少人数で経営する企業・団体のための開業準備支援、事業運営に関する助言、事業計画に関するコンサルティング、経営者専門のファイナンシャルプランナーとして事業計画に沿ったファイナンシャルプランニング等を5年で計260件以上携わる。
趣味は酒宴に参加すること。

【ホームページ】
http://www.g-fellows.biz

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